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JAPAN珍聞

ジャパンちんぶん

ウォン・カーウァイ的映画「ムーンライト」

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あらすじ

 名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校ではいじめっ子たちから標的にされる日々。自分の居場所を失くしたシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。 高校生になっても何も変わらない日常の中で、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れることに・・・・

(公式サイトより引用)

 

製作年2016年
上映時間111分

moonlight-movie.jp

 

 

この作品はウォン・カーウァイの影響がかなり強い。
カメラワークや画面の色使い、音楽の使い方などそれ以外にもこの映画で幼少期、少年期、青年期の三部構成にしたのもウォン・カーウァイの「恋する惑星」や「天使の涙」などを意識したのかもしれない。
監督のバリー・ジェンキンス自身もウォン・カーウァイの影響は公言しているらしい。
「ムーンライト」はウォン・カーウァイの映画の登場人物ほど騒がしくなく、ストーリーも目まぐるしく展開するわけではない。どちらかというと淡々と物語は進行していく。なのでウォン・カーウァイの映画より比較的取っ付き易いかもしれない。
しかしウォン・カーウァイの「花様年華」や「ブエノスアイレス」などに比べると個人的には物足りなさは感じる。


ウォン・カーウァイの作品の多くは異性だろうが同性だろうが恋愛の痛み(出会いと別れ)を主題にしている。
「ムーンライト」はウォン・カーウァイ作品の影響は受けてはいるが主題は恋愛だけではない。
この作品はLGBTQの恋愛だけではなく、貧困やいじめも背景に描かれ、コミュニティーも主題になっている。
ただ主題を複数にしたせいか恋愛に関しては、あまり深く掘り下げられていないように感じた。
この作品はどちらかというとLGBTQの恋愛よりも、その描写をややコミュニティーに比重を置いたせいで、ウォン・カーウァイの作品を観たときのような恋愛に関しての「痛み」が個人的には映画を観ていてあまり伝わってこなかった。

 

「ムーンライト」の監督バリー・ジェンキンスと、この映画の原案ともなる戯曲を書いたタレル・アルビン・マクレイニーが、この映画の主人公シャロンと同様の境遇に身を置いていたらしい。
2人とも住んでいた地区、学校も同じ、映画同様2人の母親も麻薬中毒者だったとのことなので「ムーンライト」は2人の半自伝的な作品とも言える。
こういった生い立ちの理由からかこの映画は主人公シャロンの住む地域環境の描写から始まる。
まずは観客に主人公がいかに劣悪な環境に身を置いているのかを伝えたかったのだろう。
ただ、その冒頭シーンがいささか長すぎる。
上映開始20分ぐらいは、一体何の映画なのか話がまったく見えてこない。
このコミュニティーの描写に比重を置いたためなのかシャロンの相手であるケヴィンの描写がやや不足に感じた。
ケヴィンの描写が不足なので、その行動が唐突すぎるように思うのだ。(浜辺での行為や何年も疎遠だったのにも関わらず突然夜中に電話するなどの行動が)
とはいっても「ムーンライト」はラブストーリーを描きたかったのではなく、本当の主題は人の成長していく姿を描きたかったのかもしれない。

最後に予算の都合で「ムーンライト」は25日間という短期間で撮影されたらしい。
シャロンの幼少期、少年期、青年期はそれぞれ3人の俳優が演じているのだが監督の考えで3人共、顔を会わせることなく別々に撮影したというが3人とも見事に1人のシャロンを演じている。これは本当にすごい。