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JAPAN珍聞

ジャパンちんぶん

村上春樹で読み解く森友学園問題

1

 

 

よく森友学園の夢を見る。

夢の中では森友学園の土地購入価格は歪められている。土地購入価格がとても安いのだ。あまりに安いので、豊中市議会議員が情報開示請求を行なった。その問題は朝日新聞から宇宙の終局までに延びている。
そこでは誰かが涙を流している。
森友学園問題の為に涙を流しているのだ。
そういう夢だ。

 

目が覚める。土地購入価格について考える。考えるだけでなく実際に計算してみる。「9億5600万円-?円=1億3400万円」と。でもそれは無意味な計算だ。計算するまでもなく答えは始めからわかっている。ゴミ撤去費用として見積もった約8億円を差し引いたのだ。国からは除染費として1億3200万円も支払われたこともある。

売却額が妥当か否か。誰かが口利きを行っている。でも近畿財務局は瑕疵がないと言っている。

その言い分を覆すだけのいくつかの材料。教育勅語、彼女の名誉校長就任予定、100万円の寄付、安倍首相がんばれ。と、土地売買とは関係のない話ばかり―いや、それは単なる共謀罪の妨害目的なんだろうか―塵だらけの豊中市の朝の光。時には雨が降っている。得体の知れないモノも降ってくる。菅野さん。

誰。

活動家。

ジャーナリスト。

肩書き。

ノンフィクション作家。

肩書き。

ライター。

修正。

作家。

はあちゅう

そして軒から落ちる雨垂れを眺めながら、森友学園のことを考える。

 

 

 


2

 

 

ネトウヨなんて・みんな・糞くらえさ」
「奴らになんて何もできやしない。保守派面してる奴らを見るとね、虫唾が走る」アサヒはそう怒鳴った。
大声を出してしまうとアサヒはいつものように満足した面持ちで楽しそうに捏造記事作成に取り組んだ。
アサヒがネトウヨの悪口を言うのは今に始まったことではないし、また実際にひどく憎んでもいた。


「なぜネトウヨ安倍が嫌いだと思う?」
その夜アサヒはそう続けた。そこまで話が進んだのは初めてだった。
わからない、といった風に僕は首を振った。
「はっきり言ってね森友学園への国有地売却にネトウヨ安倍たちが政治関与しているからさ」
はっきり言って、というのがアサヒの口癖だった。
「そう?」
「うん。奴らが不当に関与しているのは間違いない。だが認めないんだ。何故だと思う?」
「さあね」
「戦前の日本を取り戻すためさ。奴らは戦争がしたくてウズウズしているのさ。でもね、俺はそうじゃないし、あんただって違う。大陸国家が島国に侵略してくるなんて有り得ない。ミサイルだって気のせいさ。そうだろ?」
「???・・・あ、ああ」
「そいうことさ」
アサヒはしゃべりたいことだけをしゃべってしまうと、ポケットから朝日新聞紙を取り出しつまらなそうに音をたてて鼻をかんだ。アサヒがいったいどこまで真剣なのか、僕にはうまくつかめなかった。

「でも朝日の本社も不当に安い値段で国から譲り受けたんだろ?」僕は試しにそう言ってみた。

「そりゃそうさ。ブーメランになろうがネトウヨ安倍を叩ければなんだっていいのさ。でもね、社説でも書いたように森友学園の政治家の関与は解明してほしいね。そうだろ?」

なにも言えなかった。

 

 

 

3

 

 

「ねえ」と彼女が言った。「閣僚の一人も辞任に追い込めなかったの?」
「うん」
「本当、それ?」
「本当だよ。アッキーが池やんに100万円を渡してないみたいなんだ」
「可哀そう」と彼女は言った。
「ありがとう」と僕は言った。
「でも、何とか打開してみせるよ」
「どんな風に?」
僕は肩をすぼめて何も言わなかった。


「ねえ、これからネトウヨのところまで行って抗議してみようよ」と僕は言った。
「だって政治家の関与は何もないんでしょう?」と彼女はあきれたように言った。「それにいったい何処のネトウヨのところに行くの?」
「サンケイ」と僕は言った。
「でもサンケイはネット上に流布している流言飛語をあたかも根拠ある疑惑であるかのように報道してるからね。著しく公正を欠いた報道と言わざるを得ないよ。」
彼女はどうかしらという風に首を振った。でも僕がさあ行こうと言って立ち上がると、彼女はついてきた。
「サンケイもネトウヨなの?」と彼女が訊いた。
「むずかしい質問だ」と僕は言った。
「君は好きな民進党議員はいるの?」
「いない」と彼女は言った。「嫌な奴はいっぱいいるけど」
「気持ちはわかる」と僕は言った。
「ねえ」と彼女が言った。
「忖度させてる?」
「一度させた」
「どうして?」
「都合の悪いことを拡散されるのは困るんだ」
彼女はそれについてしばらく考えていた。「サンケイとは通じあえなかったの?」と彼女が訊いた。
「通じ合えていると僕はずっと思っていた」と僕は言った。「でもサンケイはそう考えなかった。見解の相違。だから抗議するんだ。たぶん見解の相違を訂正させるには法的措置も含めて恫喝と圧力をかけちゃう方が手っ取り早いからね」
「上手くいくの?ブーメランにならない?」
「そんなこと心配してない」と僕は彼女の目を見て言った。「そんなこと始めから心配してないよ。僕は最初からネトウヨ安倍が関与しているのは証拠はなくとも間違いないと思っている。どうしてかはわからない。でもそうなんだ。安心して」と僕は言った。
彼女は何も言わずにただ静かに首を振った。
そして暗闇がやって来た。